21世紀の医療として、遺伝子医療・再生医療に代表される先端医療の臨床での実践が期待されています。最近のヒトゲノム解析をはじめとする生命科学技術の進展により、病気の原因が遺伝子レベルや細胞レベルで明らかになってきました。それらの基礎研究の成果を臨床的治療に応用するのが先端医療です。一般医療ではありませんが、それぞれの患者さんの状況に応じた、より科学的根拠に基づく新しい医療の開発と実践を目指すものです。
先天性疾患を対象として世界で初めて遺伝子治療の臨床応用が試みられ、すでに10年以上が経過しました。その間に、難治性のがんやHIVなどの感染症、さらに生活習慣病などの慢性疾患などに対する様々なプロトコールが検討されてきました。また最近では、骨髄細胞や臓器幹細胞を用いた再生医療の臨床応用が積極的に進められています。細胞が持つ未知の分化・成熟に関する機能を明らかにすることで、これらの細胞治療が現実のものとなってきているのです。これらの治療は未だ確立された医療とはなっていませんが、中にはその臨床的な有効性を確認できる治療法も認められ、ゆっくりとですが着実に一般医療に近づいてきています。これらの先端医療の推進は、今後の医療や福祉の分野の発展に大きく貢献するものと期待されています。
「遺伝子・細胞治療センター Center for Gene and Cell Therapy
(CGCT)」は、従来の研究・医療体制とは異なる、先端医療の臨床実践に特化した機能単位として、平成15年4月に岡山大学附属病院(現 岡山大学病院)に設置されました。ハード面では、中央診療棟5階にウイルスなどの生物製剤を扱うP2ルーム、患者さんに投与する細胞を調整するクリーンルーム、さらにそれらの細胞・生物製剤の品質を管理するQCルームなど最新の設備を完備しており、各部屋の清浄度は24時間モニターされています。ソフト面では、臨床各科のプロジェクトについて、プロトコールの立案から科学的・倫理的評価、実践に際しては、治療の安全性、有効性、コストに関するデータ収集からその臨床的有用性や将来的な汎用性の判定までを支援します。また、患者さんの選定において適応条件を満たしているか、インフォームド・コンセントが適正に行われているかなどのモニタリングを行い、計画の遵守を検証します。さらに、各プロジェクトの情報を学内・学外に向けて積極的に発信していきます。すなわち、基礎研究の臨床応用、いわゆるトランスレーショナル・リサーチ(探索研究)の推進による先端医療開発が遺伝子・細胞治療センターの使命であります。センターを核として新たな先端医療技術が開発され、21世紀の医療における画期的な貢献が生み出されるよう努力いたします。